3月。うららかな春の昼下がり、“公園口”というバス停の脇から井の頭恩賜公園に入ります。そこでよく目にする「漢方ゆかりの植物」をご紹介致しましょう。
公園の西を歩いて小さな橋を渡るとき、池のほとりにたくさんの白い花をつけた大きな木が見えました。これが“こぶし(辛夷)”です。そう、千昌夫さんの「北国の春」の歌詞「こぶし咲く あの丘 北国の・・・」に出てくるあの花。庭木の木蓮と同じ仲間の植物で、開花時期はまさに今、3月下旬から4月半ば頃まで。
実はこの“こぶし”、漢方の生薬の一つです。花のつぼみを摘み取り乾燥させたものを、“辛夷”(同じ漢字で“しんい”)と呼びます。鼻づまりを通し、頭痛を止める薬能があります。しばしば「副鼻腔炎」を治療する処方に配合されます。
葛根湯加川きゅう辛夷や辛夷清肺湯という処方が有名で、この植物が中心となって働くためその名が入れられています。
さて、さらに公園を歩きますと、紅白の梅の木と並んで黄色い花を沢山つけた木が一本。これが山茱萸です。葉のない裸の枝に、まち針のような小さな黄金色の花が数十個集まって、鞠のようについています。山茱萸は“春黄金花”、あるいは秋に紅色の楕円形の実をつけることから“秋珊瑚”とも呼ばれます。
日本には江戸中期の頃に渡来し、茶花として使われ、生け垣・庭園・公園でよく見かけます。 漢方では、この花の雌しべを包んでいたところ(花托)が発達した“偽果”と呼ばれる部分が薬用部位で、虚弱・老衰に対する滋養強壮作用があります。六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸に含まれています。
<辛夷 しんい> モクレン科
味:辛
性:平 (肺・胃経)
主成分 citral eugenolからなる精油
薬理作用 散風通竅
<山茱萸 さんしゅゆ> ミズキ科
味:酸・渋
性:微温 (肝・腎経)
主成分 cornin、 gallic acid、tartaric acid、malic acid
薬理作用 補益肝腎 渋精 斂汗
文責:横山浩一(2009/03/24)
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