甲状腺機能亢進症の漢方治療

薬の副作用や残る症状に悩むあなたへ

最近、食欲はあるのに体重が減ったり、動悸や手の震えを感じたりすることはありませんか。あるいは、常に体が熱っぽく、汗をかきやすく動悸を感じるなど、原因のわからない体調不良に悩んでいる方もいるかもしれません。

その不調、もしかしたら「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」という病気のサインかもしれません。ここでは、甲状腺機能亢進症の具体的な症状、体の中で何が起こっているのかという病態、そして現代医学と漢方医学による治療法まで、専門医がわかりやすくまとめます。

まずはセルフチェック|甲状腺機能亢進症の代表的な症状

甲状腺機能亢進症は「全身の症状があらわれる病気」とも言われ、そのサインは心と体のさまざまな部分に現れます。まずはご自身の最近の体調と照らし合わせながら、どのような症状があるかチェックしてみましょう。

全身・精神にあらわれる症状

甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が異常に活発になり、交感神経が興奮状態になります。その結果、以下のような多様な症状が引き起こされます。これらの症状は一つだけ現れることもあれば、複数が同時に現れることもあります。

分類 主な症状 なぜ起こるの?(簡単なメカニズム)
全身症状 体重減少 食欲が増しているにもかかわらず体重が減ります。代謝が活発になり、常にエネルギーを消費している状態のためです。
疲労感・脱力感 体は活動的でも、筋肉の分解が進むため疲れやすくなります。
発汗過多・暑がり 代謝亢進で体温が上がり、暑さを強く感じて汗をかきやすくなります。
手指の震え 交感神経が刺激され、筋肉が緊張するために起こります。
精神症状 イライラ・神経過敏 中枢神経が刺激され、精神的に不安定になりがちです。
不眠 神経が高ぶり、寝つきが悪くなったり眠りが浅くなったりします。
不安感・焦燥感 漠然とした不安や、落ち着かない気持ちに襲われることがあります。
集中力低下 注意力が散漫になり、仕事や家事に集中しにくくなります。
循環器症状 動悸・頻脈 安静時でも心拍数が1分間に100回を超え、ドキドキします。心臓が過剰に働くためです。
不整脈 心臓のリズムが乱れ、時に心房細動などを起こすリスクがあります。
消化器症状 下痢・軟便 腸の動きが活発になりすぎるため、下痢や排便回数の増加が見られます。
その他の症状 月経異常 ホルモンバランスが乱れ、月経不順や月経量の変化が起こることがあります。
甲状腺腫大 首の付け根(のどぼとけの下)にある甲状腺自体が腫れて、首が太く見えることがあります。

これらのつらい症状は、ホルモンの異常によって引き起こされているのかもしれません。

甲状腺機能亢進症とは?体の中で起きていること(病態)

ここまで様々な症状を見てきましたが、そもそも「甲状腺機能亢進症」とは、私たちの体の中で一体何が起こっている状態なのでしょうか。専門的な内容も含まれますが、できるだけ分かりやすく解説します。

代謝を活発にする甲状腺ホルモンの過剰分泌

私たちののどぼとけの辺りには、蝶のような形をした「甲状腺」という臓器があります。甲状腺は、食べ物に含まれるヨウ素を材料に「甲状腺ホルモン」を作り、血液中に分泌しています。

甲状腺ホルモンは、体の新陳代謝を適切なレベルに保つ、いわば「元気のホルモン」です。しかし、何らかの原因でこのホルモンが過剰に作られすぎると、全身の新陳代謝が異常に活発になります。これが、甲状腺機能亢進症の状態です。例えるなら、自動車のアクセルが常に踏み込まれ、エンジンが空ぶかしを続けているようなもので、体は大量のエネルギーを消耗し、さまざまな臓器がオーバーワーク状態に陥ってしまうのです。

甲状腺機能亢進症の原因は?

「甲状腺機能亢進症」の原因として最も多いのが「バセドウ病」です。

バセドウ病は、本来ウイルスなどの外敵から体を守るはずの「免疫」システムに異常が生じ、誤って自分自身の甲状腺を「敵」とみなして攻撃してしまう「自己免疫疾患」の一つです。バセドウ病では「TSH受容体抗体(TRAb)」という抗体が作られて、常に甲状腺ホルモンを作るスイッチを刺激し続けるため、甲状腺ホルモンが過剰に産生されてしまうのです。

バセドウ病以外にも、甲状腺にできた良性のしこりがホルモンを過剰に産生する「中毒性多結節性甲状腺腫」や、ウイルス感染などによる「亜急性甲状腺炎」なども甲状腺機能亢進症の原因となります。また慢性甲状腺炎(別項参照)の経過中に、炎症によって濾胞(甲状腺ホルモン貯蔵庫)が破壊されてホルモンが溢れ出すことで、一時的な機能亢進状態となることがあります。これらは時にバセドウ病と区別がつきにくいことがありますが、甲状腺ホルモン産生を抑えるバセドウ病の治療を行うと一気に低下症に陥ることがあるため注意深く診断する必要があります。

バセドウ病に特徴的な眼や皮膚の症状

甲状腺機能亢進症の原因として最も多い「バセドウ病」では、上記の全身症状に加えて、以下のような特有の症状が現れることがあります。これは、甲状腺を攻撃する自己抗体が、眼の周りの組織や皮膚にも影響を与えるために起こります。

部位 特徴的な症状 どのような状態か
眼の症状
(甲状腺関連眼症)
眼球突出 眼球が前方に突き出て、驚いたような、あるいは目つきが鋭くなったような顔つきに見えることがあります。
複視 眼を動かす筋肉が炎症を起こし、物が二重に見えることがあります。
眼瞼後退 まぶたが通常より上に引き上げられ、白目の部分が目立つようになります。
眼の痛み・異物感 角膜が乾燥しやすくなり、目がゴロゴロしたり痛んだりすることがあります。
皮膚の症状 脛骨前粘液水腫 すねの前の皮膚が、オレンジの皮のように厚く硬くなることがあります(比較的まれです)。

これらの症状も病気の一環であり、治療の対象となります。
特に眼の症状は専門的な治療が必要になる場合があるため、気になる場合は早めに医師に相談することが重要です。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の治療法|3つの選択肢を比較解説

甲状腺機能亢進症の治療には、主に3つの選択肢があります。
どの治療法が最適かは、患者さんの年齢や症状の重さ、ライフプラン(妊娠の希望など)、甲状腺の腫れの大きさなどを総合的に考慮し、医師と相談しながら決定します。
それぞれの治療法の特徴を比較してみましょう。

治療法 概要 メリット デメリット こんな方におすすめ
薬物療法 抗甲状腺薬という飲み薬で、甲状腺ホルモンの合成を抑えます。 ・外来で手軽に始められる
・手術が不要
・長期間(数年単位)の服用が必要
・副作用(かゆみ、肝機能障害、無顆粒球症など)のリスクがある
・中止後の再発率が比較的高い
・ほとんどの患者さんの第一選択肢
・軽症から中等症の方
放射性ヨード内用療法
(アイソトープ治療)
放射線を出すヨードのカプセルを1回飲むことで、甲状腺の細胞を内側から破壊し、ホルモン産生能力を低下させます。 ・根治が期待できる
・体への負担が少ない
・治療後に甲状腺機能低下症となり、ホルモン補充薬が一生必要になることが多い
・妊娠中、授乳中、近い将来妊娠を希望する方には行えない
・薬物療法で効果が出にくい、または副作用が出た方
・再発を繰り返す方
・早く治したい方
手術療法
(甲状腺切除術)
甲状腺ホルモンを産生している甲状腺そのものを手術で切除します。 ・短期間で確実な効果が得られる
・再発の可能性が最も低い
・入院が必要
・首に傷跡が残る
・合併症(声のかすれ、カルシウム低下など)のリスクがある
・甲状腺の腫れが非常に大きい方
・薬物療法やアイソトープ治療が適さない方
・悪性の疑いがある場合

薬物療法(抗甲状腺薬)

日本のバセドウ病治療では、まず薬物療法から開始することが一般的です。主に「メルカゾール(一般名:チアマゾール)」や「プロパジール/チウラジール(一般名:プロピルチオウラシル)」といった抗甲状腺薬が用いられます。これらの薬は、甲状腺ホルモンが作られるのをブロックする働きがあります。

治療開始後、1〜3ヶ月ほどで甲状腺ホルモンの値は正常化しますが、自己抗体がなくなるまでには時間がかかるため、通常は最低でも1〜2年間は服用を続ける必要があります。最も注意すべき副作用は「無顆粒球症」で、頻度は低い(0.1〜0.5%)ものの、白血球の一種である顆粒球が極端に減少して感染症に非常に弱くなる状態です。薬の服用中に、急な高熱(38.5℃以上)や激しいのどの痛みが出た場合は、直ちに服用を中止し、医療機関に連絡してください。

放射性ヨード内用療法(アイソトープ治療)

この治療は、ヨードが甲状腺に取り込まれやすい性質を利用したものです。放射線を出すヨード(I-131)が入ったカプセルを飲むと、その成分が甲状腺に集まり、内部から甲状腺の細胞だけを選択的に破壊します。他の臓器への影響はほとんどありません。

治療は1回の内服で完了することが多く、体への負担も少ないのが特徴です。ただし、治療効果によって甲状腺の機能が低下しすぎると、今度は逆に甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」になる可能性が高くなります。その場合は、不足したホルモンを補う薬(甲状腺ホルモン薬)を生涯飲み続ける必要があります。

手術療法(甲状腺切除術)

手術は、甲状腺ホルモンを過剰に産生している甲状腺組織そのものを物理的に取り除く、最も確実な治療法です。甲状腺をすべて摘出する「全摘術」と、一部を残す「亜全摘術」があります。全摘術の場合は再発のリスクはほぼありませんが、生涯にわたる甲状腺ホルモン薬の内服が必須となります。

手術には、声のかすれ(反回神経麻痺)や、血液中のカルシウム濃度が低下して手足がしびれる(副甲状腺機能低下症)といった合併症のリスクが伴いますが、経験豊富な施設ではその頻度は低くなっています。

治療中の日常生活で心がけたいこと

どの治療法を選択するにしても、病状を安定させ、治療効果を高めるためには日常生活でのセルフケアが重要になります。

  • ヨードの過剰摂取に注意:ヨードは甲状腺ホルモンの材料です。昆布、ひじき、わかめといった海藻類や、うがい薬に含まれるヨードを過剰に摂取すると、病状に影響を与えることがあります。神経質になる必要はありませんが、日常的に大量に摂取するのは避けましょう。
  • 十分な休息と睡眠:代謝が亢進している体は、自分が思う以上にエネルギーを消耗し、疲れやすくなっています。無理をせず、十分な睡眠時間を確保することを心がけてください。また心房細動など不整脈のリスクがあるため、心臓に負担がかかるようか運動は控えるようにしましょう。
  • 禁煙の徹底:喫煙はバセドウ病の病状、特に眼の症状を悪化させることが科学的に証明されています。治療中の方は必ず禁煙してください。
  • ストレス管理:精神的・身体的なストレスは、病状を悪化させる引き金になることがあります。自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスを上手に発散させることが大切です。

甲状腺機能亢進症に関するQ&A

ここでは、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。

Q. この病気は完治しますか?治療期間はどれくらいですか?

A. バセドウ病の場合、「寛解(かんかい)」という、薬を飲まなくても甲状腺機能が正常に保たれる状態を目指します。薬物療法では、1〜2年で約半数の方が寛解に至るとされていますが、数年以上の服用が必要な方や、再発を繰り返す方もいます。アイソトープ治療や手術は、より根治に近い治療法と言えます。

Q. ストレスや遺伝は原因になりますか?

A. バセドウ病は、遺伝的な体質(かかりやすさ)を背景に、強いストレス、感染症、妊娠・出産などが引き金となって発症することがあると考えられています。ただし、親がバセドウ病だからといって、必ずしも子供が発症するわけではありません。

Q. 妊娠・出産はできますか?

A. はい、可能です。ただし、安全な妊娠・出産のためには、妊娠前から甲状腺機能をしっかりとコントロールしておくことが非常に重要です。妊娠がわかった場合、自己判断で薬をやめず、必ず主治医に相談してください。妊娠の時期に応じて、より安全な薬に変更するなどの対応を行います。専門医による管理のもとであれば、多くの方が無事に出産されています。

甲状腺機能亢進症と漢方

薬を飲んでいるのに、動悸やイライラがおさまらない。このまま薬を飲み続けることへの漠然とした不安がある。実際に、西洋薬で治療を受けている多くの方が、以下のような共通の壁に直面しています。

治療段階 患者さんが感じやすい不安やお悩み
治療初期 薬を飲み始めても、動悸や微熱、発汗などの症状がなかなか改善しない
治療中期 メルカゾールなどの副作用(かゆみ、肝機能の数値など)が気になる
治療後期 数値は安定してきたが、疲労感や気分の落ち込みが続いている
全期間共通 この先、いつまで薬を飲み続けなければならないのか、将来的な見通しが立たない

西洋薬による治療は非常に重要ですが、それだけでは改善しきれない心身の不調や、長期服用への不安を感じる方は少なくありません。こうした西洋薬だけではカバーしきれない症状や、精神的な不安をケアする選択肢として、漢方治療は有用なものと考えます。漢方は、病気の根本にある「体質」から見直していくことで、心身全体のバランスを整えることを目指す治療法です。

次に、漢方がどのように心と体に働きかけるのか、具体的な処方例から西洋薬との飲み合わせの安全性まで、専門的な情報まとめましょう。あなたのQOL(生活の質)を高めるための新たな一歩を踏み出すヒントが見つかることでしょう。

漢方医学から見た甲状腺機能亢進症|不調の原因は全身のバランスの乱れ

歴史的には甲状腺の腫れを漢方医学では、「癭瘤(えいりゅう)」と呼ばれていました。甲状腺腫をきたすヨード不足あるいは甲状腺機能亢進症も、その原因のひとつなのかもしれません。

そして漢方ではそれを甲状腺という一つの臓器の問題だけでなく、心と体全体のエネルギー(気・血・水)のバランスが乱れた結果、首周りに不調が現れている状態と解釈します。

漢方医学の視点 具体的な内容
気の滞り(気逆) ストレスや緊張状態が続くことで、エネルギーの流れが乱れ、イライラや不眠、動悸などを引き起こします。
血の滞り(瘀血) 血行が悪くなることで、甲状腺の腫れや、のぼせ、冷えなどの症状が現れやすくなります。
水の滞り(水滞) 体内の余分な水分がうまく排出されず、むくみやだるさ、喉の違和感の原因となります。

このように、漢方治療は甲状腺ホルモンの数値を直接下げることを目的とするのではなく、不調の原因となっている体質の乱れを整えることを目指します。全身のバランスが整うことで不快な症状が和らげる、これが漢方のアプローチです。

甲状腺機能亢進症でよく使われる代表的な漢方薬

甲状腺機能亢進症の治療に漢方を取り入れたいと思っても、「どの漢方薬が自分に合うのか分からない」という方がほとんどでしょう。

漢方治療の大きな特徴は、同じ病名であっても、その人の体質や現在の症状、つまり「(しょう)」に合わせて処方を使い分ける点にあります。そのため市販の漢方薬を自分で選ぶことは、なかなか難しいことかもしれません。ここでは、甲状腺機能亢進症の治療で、専門家が処方することが多い代表的な漢方薬を、症状や体質別にご紹介します。ご自身の状態と照らし合わせながら、漢方治療のイメージを掴むための参考にしてください。

イライラ・不安・不眠など精神的な不調に「柴胡加竜骨牡蛎湯」

西洋薬でホルモン値が安定しても、イライラや焦燥感、夜眠れないといった精神的な不調が続くことは少なくありません。特に、ストレスを感じると症状が悪化する方に適しているのが「柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」です。この漢方薬は、気の巡りをスムーズにし、高ぶった神経を鎮める働きが期待できます。

主な配合生薬 期待される働き
柴胡(さいこ) ストレスによって滞った「気」の流れを改善し、胸のつかえやイライラを和らげます。
竜骨(りゅうこつ) 古代の哺乳動物の化石で、精神を安定させ、不安や動悸を鎮める効果があります。
牡蛎(ぼれい) カキの貝殻で、竜骨と同様に精神安定作用があり、不眠の改善にも役立ちます。

精神神経症状の緩和に有効な選択肢の一つと考えられます。

動悸・息切れ・疲労感が強いときに「炙甘草湯」

「少し動いただけですぐに動悸がする」「常に息切れがして、体がだるくて仕方がない」。甲状腺機能亢進症では、代謝が過剰になることで心臓に負担がかかり、このような循環器系の症状や強い疲労感に悩まされる方が多くいます。

炙甘草湯(しゃかんぞうとう)」は、こうした身体的な消耗が激しい方に用いられることが多い漢方薬です。心臓に栄養と潤いを与え(滋陰・養血)、弱った心機能の回復をサポートする働きがあります。

主な配合生薬 期待される働き
炙甘草(しゃかんぞう) 炙ることで薬効を高めた甘草。心臓のエネルギー(心気)を補います。
人参(にんじん) 全身の活力を高め、疲労回復を助けます。
麦門冬(ばくもんどう) 体に必要な潤いを補給し、乾燥からくる息切れや動悸を和らげます。

体力が低下している方や、消耗が激しい方のQOLを向上させる助けとなる処方です。

のぼせや甲状腺の腫れが気になるときに「桂枝茯苓丸」

甲状腺機能亢進症の症状として、顔のほてりやのぼせ、首の腫れ(甲状腺腫)が気になる方もいるでしょう。漢方では、これらの症状を血の巡りが滞っている「瘀血(おけつ)」の状態と捉えることがあります。「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」は、この瘀血を改善する代表的な漢方薬です。

全身の血行を促進することで、滞りを解消し、関連する症状(のぼせなど)を和らげることを目指します。また局所ではうっ血を晴らすことで、腫れが引くように作用すると考えられます。

主な配合生薬 期待される働き
桂皮(けいひ) 体を温め、血行を促進することで、のぼせや冷えのバランスを整えます。
茯苓(ぶくりょう) 体内の余分な水分を排出し、血の巡りをスムーズにします。
牡丹皮(ぼたんぴ) 血の滞りを解消し、炎症を鎮める働きがあり、腫れの緩和にも繋がります。

特に、長期間にわたって症状が続いている方や、冷えを伴うのぼせがあるような体質の方に適しています。

漢方治療のギモン解決|西洋薬との併用・副作用・禁忌について

漢方治療を検討する上で、多くの方が気になるのが「安全性」に関する疑問ではないでしょうか。「今飲んでいるメルカゾールと一緒に飲んでも大丈夫?」「漢方薬に副作用はないの?」

ここでは、そうした不安を解消するために、西洋薬との併用や副作用、禁忌(飲んではいけないケース)について、正確な情報をお伝えします。正しい知識を持つことが、安心して治療に臨むための第一歩です。

メルカゾールとの併用は可能?飲み合わせの注意点

甲状腺機能亢進症の治療において、メルカゾールなどの西洋薬と漢方薬の併用は可能です。
メルカゾールなどの抗甲状腺薬が必要な場合はそれを優先して、甲状腺機能を正常化させる必要がありますが、漢方治療を組み合わせることで心身の不調をより速やかに改善することが期待できます。

併用によるメリットの例

  • 副作用の軽減:抗甲状腺薬によって起こりうる倦怠感や食欲不振などを、漢方薬(例:補中益気湯)が和らげる可能性があります。
  • 症状の多角的な緩和:西洋薬が効きにくいイライラや不眠といった精神症状を、漢方薬がケアします。
  • 根本的な体質改善:西洋薬でホルモン値を抑えつつ、漢方薬で病気の根本原因となっている体質の乱れを整えます。

ただし漢方薬の中には他の薬の効果に影響を与えたり、その頻度は低いながら副作用を生じるものも存在します。必ず、現在の治療状況を漢方の専門医に伝え、西洋医学の主治医にも漢方薬を服用していることを報告し、両者の連携のもとで治療を進めることが重要です。

漢方薬の副作用と飲んではいけないケース(禁忌)

「漢方薬は天然由来だから安全」というイメージがありますが、薬である以上、副作用のリスクがゼロではありません。体質に合わない場合や、特定の条件下では服用を避けなければならないケース(禁忌)も存在します。

漢方薬の例 考えられる副作用(頻度はまれ) 特に注意が必要な方(禁忌・慎重投与)
柴胡加竜骨牡蛎湯 黄芩による肝機能障害・間質性肺炎 膠原病の方、冷え性の方
桂枝茯苓丸 のぼせ、発疹など 妊娠中または妊娠の可能性がある方(子宮収縮作用のリスク)
炙甘草湯 むくみ、血圧上昇(偽アルドステロン症) 高血圧、低カリウム血症、腎臓に持病のある方

これらの副作用は、いずれも発生頻度は低いとされています。しかし、安全に治療を進めるためには、服用を開始した後に何か体調の変化を感じたら、すぐに処方した医師や薬剤師に相談することが不可欠です。

治療効果を高めるセルフケア|食事と生活で体質改善をサポート

漢方薬の服用とあわせて、日々の生活習慣を見直すことは、治療効果を高め、根本的な体質改善を促す上で非常に重要です。薬だけに頼るのではなく、ご自身の生活の中にセルフケアを取り入れることで、心と体の回復を力強くサポートできます。

ここでは、今日から始められる食事と生活のポイントをご紹介します。

セルフケアのポイント 具体的な実践例 備考
食事の注意点 - 海藻類(昆布、わかめ等)の過剰摂取を避ける
- 香辛料やカフェインなどの刺激物を控える
- バランスの良い食事を心がける
ヨウ素の摂取については、過剰も不足も良くないとされています。主治医や管理栄養士の指導に従いましょう。
ストレス管理 - 軽い運動(ウォーキング、ヨガなど)を取り入れる
- 趣味やリラックスできる時間を作る
- 十分な睡眠を確保する
甲状腺機能亢進症はストレスが悪化要因となることが多いです。自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
生活リズム - 規則正しい生活を送り、体内時計を整える
- 過労を避け、無理のないスケジュールを立てる
代謝が亢進している状態では、体力を消耗しやすくなっています。意識的に休息を取り、心身を休ませてあげましょう。

これらのセルフケアは、漢方医学が重視する「気・血・水」のバランスを整えることにも繋がります。無理のない範囲で、できることから生活に取り入れてみてください。

まとめ:不安な症状は一人で抱え込まず専門医へ

甲状腺機能亢進症は、体重減少、動悸、疲労感、イライラなど、心と体に多様な症状を引き起こす病気で、その原因の中で最も多いのはバセドウ病です。

これにはまず侵襲性の少ない薬物療法、その先にアイソトープ治療、手術療法といった確立された治療法があり、適切な治療を受ければ症状をコントロールし、健やかな日常生活を送ることが可能です。まずは内科、特に甲状腺の専門科である「内分泌内科」を受診するのがおすすめです。

なお当院では、必要に応じて血液検査・超音波検査などを行い、まずは内科的治療によって甲状腺機能の正常化を目指します(抗甲状腺薬による治療が困難な場合には、アイソトープ治療や手術療法を検討のため高次医療機関への紹介となります。)その上で東洋医学的な診断も並行して行い、総合的に患者さんの状態を判断して治療方針を立てています。甲状腺の不安・心身の不調に広く対応しておりますので、不安な症状があれば一人で抱え込まずに、まずはご相談ください。

文責:横山浩一
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