ニキビや吹き出物は、脂漏部位といわれる皮脂が多く分泌される部位にできやすいのです。プクッとふくれた状態は皮脂によって毛穴がふさがれ、皮脂と角質=あかが詰まるのです。この貯まった皮脂をえさにする細菌が、皮膚の表面にいるニキビ菌(P.acnes) なのです。
このニキビ菌が増殖すると、皮脂を分解して脂肪酸を作り、この脂肪酸が炎症を引き起こす引き金となり、皮膚炎が起きるので赤く腫れてくるのです。化膿した膿が外に破れて出てくると、周りに広がってしまうこともあります。こうなると傷は深くなり、痕が残ってしまう瘢痕という状態になります。
皮膚を清浄することは正しいのですが、そのことで皮膚炎がかえって悪化していることも少なくないのです。洗顔クリームやニキビローションさらに、スクラブは毛穴の奥まで洗浄できることが謳われていますが、皮膚への刺激が少なくないので、皮膚炎のあるときは避けた方がよいのです。ニキビ菌に効果のある抗菌薬を服用してもなかなか良くならないというときは皮膚炎の治療が必要な場合が多いようです。
ニキビや吹き出物が気になる方が増えてきているようです。ヒトの視線が気になる、近くで顔を見られたくないとおっしゃる方が年々増加傾向にあります。春先に吹き出物が出やすいのは経験されたことがおありでしょう。ところが、一年中出るとやっかいですね。出現する場所が顔や胸、首筋、背中など外から見える場所なのも困りものです。通常は、ご本人が気にするほど他人は気にならないものなのですが、当人にとっては大問題なのです。また、ニキビの痕が残ってしまい、これが原因でいじめられることがあり、トラウマとなっている方を何人も拝見しました。また、なかなか治らないことで、不安がつのることや、痕が残ってきえないことが悩みとなって、結果として、自信喪失し、気分が落ち込む、イライラし易くなる、集中力が低下し、生活にも仕事にも支障を来すこともあります。全身的な症状も問題になります。気力が無くなり、消極的になり、外出することを避けるようになるなど生活の質が低下します。このため、精神的な面でのケアも必要となることが多いのです。
ニキビ菌に効果のある抗生剤:内服(ミノマイシン、ルリッド)。外用(ダラシンローション・ゲル) 抗菌剤外用(アクアチムクリーム・ローション)。
ミノマイシン、ルリッドには皮膚炎を抑える効果もありよく使用されています。
ミノマイシン、ルリッドは脂肪を分解するリパーゼを抑えて脂肪酸の酸性を低下させ、皮膚炎が起きにくくする働きがあるので一石二鳥でしょう。ビタミンCの効果はヒトによります。効果が確実なのはアトピー性皮膚炎に用いられるステロイド剤(GⅢクラス)やプロトピックです。非ステロイド系抗炎症剤は効果が不確かな点で使われなくなっています。
ピーリングとは皮むきのことで、これを化学(ケミカル)物質を用いて行うとケミカルピーリングといいます。化学物質としてグリコール酸、乳酸、サリチル酸を使用して、皮膚表面の厚くなった角質層を落として、ふさがっていた毛穴が開いて貯まっていた皮脂や角質が排出されるので一気にきれいになってしまうというものです。皮膚炎が落ち着いているときでないと、刺激がありますのでかえって悪化してしまうことに。3回に分けて施行している施設が多いようで、健康保険適用はないので費用は5万円くらいかかるようです。
日常生活の中でまずご自分でできることをしつつ、主治医の先生とよくご相談なさって治療法の選択をしましょう。なんといっても症状の軽減が第一ですが、症状が治まっても悪化しないように、生活習慣の改善をお忘れなく。
この様な場合に漢方治療をおすすめします。
ニキビ体質を西洋医学で改善することは困難です。しかし、漢方治療によりニキビ体質の改善は図れます。漢方では生体の反応を過剰なものから正常に近づけるように導きます。ニキビの症状が軽症では漢方単独でも対応可能ですが、化膿や炎症が重症になると西洋薬の外用薬の併用が必要になります。治療戦略として、まず症状を沈静化し、ついでニキビ体質の改善に移ります。症状のない時こそがニキビ体質の改善のチャンスなのです。
患者1人1人に合った漢方処方を吟味しますので、決まったものはありません。ただ、症状がなくなると治療を続ける動機が薄れてきて、つい間が開いてしまう。そして、再び悪化して受診されるという方もおられます。症状が無くとも、漢方医学的には改善すべき点が複数あるものです。たとえば、「常習性便秘」や「生理の周期に伴う皮膚症状の悪化」があるなら、これを目標に漢方治療をいたします。できることなら、多少間が開いても症状のない時期に治療を受けていただきたいものです。
漢方医は処方を決めるため、患者さんの全身状態を四診(視る、聞く、嗅ぐ、質問する、触れる)により把握し、局所(額・頬・口周囲と顎そして前胸部、項部~肩胛間部)を注意深く観察します。皮膚の状態はニキビ・吹き出物のみられない四肢・腹部も観察します。最後に精神状態の診断を加え、総合的に判断して処方決定します。ニキビ・吹き出物だからこの処方などと決められないのです。漢方専門医に相談するメリットはこの点にあります。漢方医学には長年の経験に裏付けられた体系的な理論があり、これを駆使することで漢方処方が活きるのです。ニキビ・吹き出物の漢方治療については漢方診療に経験豊かな漢方専門医にご相談ください。
14歳の頃からニキビが顔面(顔・頬・顎)、首筋、前胸部、肩周囲、肩甲間部に出現した。ニキビ用洗顔料、ニキビクリーム、サプリなど手当たり次第に試してきた。一時的に改善したかに見えてもすぐに再発をくり返すため、次々と新しいものに手を出してきた。皮膚科も転々としたが、どこも同じ治療で一進一退だった。 顔に現われたニキビが気になり、出るとすぐ「つぶして」いるうちに痕が残ってしまい、頬・額を髪で隠すようになった。
17歳の時ケミカルピーリングをしたところ頬が真っ赤になりステロイド外用でおさまったが、連用するうちにステロイド紅皮症となった。ステロイド外用薬は悪だという皮膚科医に受診。ステロイドを急に中止したところかえって悪化し、外出できなくなり、1ヶ月家に閉じこもってしまった。このため18歳時家族に連れられて証クリニック吉祥寺を受診。うつむいて小声で言葉が少ない。顔を隠したい様子が痛々しい。額・頬は赤く、隆起していわゆる「アバタ」状態。ニキビが出始めた頃から便秘になり、コーラックを週2~3回使用してきた。生理前になるとイライラしてきて友人にもあたりちらしてしまう、ストレスから甘いものを何でも過食してしまう、皮膚科専門医を併診し、皮膚炎の治療をステロイド外用薬で行い、ルリッド内服を続けた。
漢方医学的には体力が充実した「おけつ」状態で便秘が常習性であったため桃核承気湯で治療開始した。桃核承気湯服用2週後には便通は毎日すっきり出るようになった。皮膚炎は軽快してきたためステロイドをランクダウンした。ルリッドの内服は当面継続とした。
人前に出ると上気しやすい、赤ら顔になりやすいことから黄連解毒湯を併用した。黄連解毒湯服用後は上気しにくくなり、赤ら顔も目立たなくなってきた。皮膚炎が沈静化したためステロイド外用は赤みが強くなって熱感のある時のみとした。ルリッドな衣服は継続。新たにニキビが出てくることは数ヶ所になり、出没してはいるが目立たなくなっていた。ルリッド内服は半年間になった時点で中止としたがニキビの悪化は見られなかった。
この頃には、うつむいて話すことも、髪で顔を隠すこともなくなっていた。頬の赤みがなくなるとニキビ痕が気になるようになってきた。黄連解毒湯と桃核承気湯を減量し、桂枝茯苓丸加ヨク苡仁を追加し、半年間継続した。ニキビ痕の隆起が目立たなくなってきた。
食事内容(中華料理・イタメシ・カレー・焼肉・ステーキ・ケーキ・クッキー・チョコレート)によりニキビが悪化することを自覚し、節制するようになったが、甘いものはついとってしまうことがある。大学入学後にストレスが重なり不安が強くなり、赤ニキビが出てきたため、黄連解毒湯を通常料に戻し沈静化した。この後ニキビが出てきた時に十味敗毒湯を一時的に使用し、普段は荊芥連翹湯と黄連解毒湯に桃核承気湯を1日1回服用として、治療開始後1年半後にはニキビ痕がほとんど目立たないまでになった。1日3回の服用を2回として減量中である。
漢方医学の治療には大きく①表面にあらわれている症状つまり患者さんの気がかりな訴えに対応する治療=標治と②体質や根底にある病態に対する治療=根治の2つがあります。
このニキビの患者さんでは黄連解毒湯や荊芥連翹湯の適応である解毒体質をふまえて、その時点で問題となっている症状に対する治療を併用することで軽快に至りました。
標治は対症療法といわれ、根本治療(根治)を行わないと場当たり的対応となります・この2つの治療法をうまく塩梅(あんばい)することが漢方治療のキモなのです。
文責:檜山幸孝
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