薬だけでは改善しない?
甲状腺機能低下症の悩みに、漢方という選択肢

甲状腺機能低下症の症状・診断・治療法を内科専門医が解説

だるさ・冷え・むくみ・便秘・体重増加。
これらは体質でしょうか?長年の不調だと諦めていませんか?
もしかしたらそれは甲状腺機能低下症が原因かもしれません。

甲状腺機能低下症は稀な病気ではありませんが、時に見つかりにくいもので、念のために調べてようやく分かるということもあります。ここでは甲状腺機能低下症について現代医学と漢方医学の両面から詳しく解説します。

あなたの不調、甲状腺機能低下症かも?
今すぐできる症状セルフチェック

甲状腺機能低下症の症状は、非常にゆっくりと現れるため、自分では気づきにくいのが特徴です。「年のせいかな」「ちょっと疲れているだけかも」と見過ごしてしまうことも少なくありません。まずは以下のチェックリストで、ご自身の体調を客観的に振り返ってみましょう。

全身に現れるサイン【初期症状チェックリスト】

全身の代謝が低下することで、さまざまな症状が現れます。当てはまる項目が多ければ多いほど、甲状腺機能低下症の可能性が考えられます。

チェック項目 具体的な症状の例
疲れ・だるさ 十分に睡眠をとっても疲れが抜けず、常に体が重く感じる。
寒がり(冷え) 他の人が暑いと感じるような状況でも、自分だけ寒く感じる。
体重増加 食事量は変わらないか、むしろ減っているのに体重が増え続ける。
むくみ 顔、特にまぶたや手足がむくむ。押しても跡が残りにくいのが特徴。
便秘 腸の動きが鈍くなり、頑固な便秘に悩まされるようになった。
声のかすれ 声帯がむくむことで、声が低くなったり、かすれたりする(嗄声)。
脈が遅くなる 心臓の働きがゆっくりになり、脈拍が1分間に60回以下になる(徐脈)。
筋肉の症状 体のあちこちで筋肉がつったり、こわばったり、痛みを感じたりする。
月経異常 月経の周期が乱れたり、経血の量が増えたりする(過多月経)。
無気力 何事にもやる気が起きず、一日中ぼーっとしてしまう。

見た目に現れる変化【むくみ・肌・髪の症状】

甲状腺ホルモンの不足は、見た目にも変化をもたらします。鏡を見て「なんだか変わったかも?」と感じたら、それは病気のサインかもしれません。

顔や手足のむくみ
特にまぶたが腫れぼったくなり、表情が乏しく見えることがあります。
このむくみは「粘液水腫」と呼ばれ、指で押しても跡が残りにくいのが特徴です。
皮膚の乾燥
汗をかきにくくなるため、肌がカサカサに乾燥し、かゆみを伴うこともあります。
特にすねの部分の皮膚が厚く、乾燥することがあります。
髪や眉毛の変化
髪の毛がパサつき、抜け毛が増えることがあります。
特徴的な症状として、眉毛の外側3分の1が薄くなることがあります。
爪の変化
爪がもろくなり、割れやすくなったり、スジが入ったりします。

心や頭に現れる症状【気分の落ち込み・物忘れ】

甲状腺ホルモンは、脳の働きにも深く関わっています。そのため、ホルモンが不足すると心や頭の働きにも影響が出ることがあります。

症状の種類 具体的な内容
気分の変化 ・やる気が出ない、無気力になる
・理由もなく気分が落ち込む、憂うつになる
思考力の低下 ・集中力が続かない
・物忘れがひどくなる
・頭の回転が鈍くなったように感じる
その他 ・日中も眠気が強い
・人の話を理解するのが難しいと感じる

これらの症状は、うつ病や認知症と間違われることもありますが、甲状腺機能低下症が原因であれば、治療によって改善が期待できます。性格や年齢のせいだと決めつけず、身体的な原因を疑うことが大切です。

甲状腺機能低下症とは?まずは病態と原因を解説

多くの症状に心当たりがあった方は、「そもそも甲状腺機能低下症ってどんな病気なの?」と疑問に思うでしょう。ここでは、病気の全体像と原因についてをまとめました。

甲状腺ホルモンの役割と機能低下のメカニズム

甲状腺は、のどぼとけの下にある蝶のような形をした小さな臓器です。ここから分泌される「甲状腺ホルモン」は、いわば全身の細胞の元気の源であり、体の新陳代謝を活発にするエンジンオイルのような役割を担っています。甲状腺機能低下症とは、この甲状腺ホルモンの分泌が何らかの原因で不足してしまう病気です。

エンジンオイルが足りなくなると車の動きが鈍くなるように、甲状腺ホルモンが不足すると全身の代謝が「スローダウン」してしまいます。その結果、先ほどチェックしたような「疲れ」「冷え」「体重増加」「むくみ」といった、さまざまな不調が現れるのです。

最も多い原因は「橋本病(慢性甲状腺炎)」

甲状腺機能低下症を引き起こす原因として、最も多いのが「橋本病(はしもとびょう)」です。これは自己免疫疾患の一つで、本来なら体を守るはずの免疫システムが、何らかの間違いで自分の甲状腺を異物とみなして攻撃してしまう病気です。

攻撃によって甲状腺に慢性的な炎症が起こり、徐々に組織が壊されていくため、ホルモンを十分に作れなくなってしまいます。
橋本病は特に成人女性に多く、家族歴がある場合には特に注意が必要です(生活習慣や性格が原因で起こる病気ではありません)。

その他に考えられる原因(手術・薬・ヨウ素など)

橋本病以外にも、甲状腺機能低下症の原因はいくつかあります。ご自身の既往歴や生活習慣に当てはまるものがないか、確認してみてください。

原因のカテゴリ 具体的な内容
治療によるもの 甲状腺の手術: 甲状腺がんやバセドウ病などで甲状腺を切除した場合
放射線治療: 首の周りに放射線治療を受けたことがある場合
薬剤によるもの ・一部の不整脈の薬(アミオダロン)や、精神疾患の薬(リチウム)など
ヨウ素の影響 ヨウ素の過剰摂取: 昆布を毎日大量に食べる、ヨウ素含有のうがい薬を長期間使用するなど
脳からの指令の異常 ・脳の下垂体や視床下部に異常があり、甲状腺への指令(TSH)が出なくなる場合(中枢性)
先天性のもの ・生まれつき甲状腺の機能が低い場合(先天性甲状腺機能低下症)

とりわけ便秘の改善やダイエットのために、ヘルシーなイメージで海藻(サラダ・味噌汁・煮物など)毎日毎食のように食べている方は要注意です。ヨウ素は甲状腺ホルモンの原材料ではあるものの、多くなるとホルモンがうまく作れなくなってしまいます。

病院での診断プロセス|何科に行き、どんな検査をする?

セルフチェックで多くの項目に当てはまった方は、念の為に一度は検査を受けることをお勧めします。
ここでは、病院での受診から診断までの流れを具体的に解説しますので、受診前の不安を解消しましょう。

専門科なら「内分泌内科」。「内科」でも相談可能。

甲状腺の病気を専門に診るのは「内分泌内科」です。
甲状腺専門のクリニックや、内分泌代謝科を標榜する総合病院を受診するのが最もスムーズです。もし近くに専門科がない場合は、まずはかかりつけの「内科」で相談してみましょう。症状を伝えれば、必要な初期検査や治療を行ってくれたり、必要に応じて専門医を紹介してくれます。

診断の決め手は血液検査(TSH, FT4, 自己抗体)

甲状腺機能低下症の診断は、主に血液検査によって行われます。いくつかの項目を調べますが、特に重要なのが以下の3つです。

検査項目 役割の例え 機能低下症での値 何がわかるか
甲状腺刺激ホルモン(TSH) 脳からの「もっと働け!」という指令(アクセル) 高くなる 甲状腺の働きが悪いことを脳が察知しているか
遊離サイロキシン(FT4) 実際に働く甲状腺ホルモン(ガソリン) 低くなる 甲状腺ホルモンが実際に不足しているか
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)
抗サイログロブリン抗体(TgAb)
甲状腺を攻撃する免疫物質 陽性になることが多い 原因が橋本病である可能性が高いか

簡単に言うと、脳(下垂体)は「ホルモンが足りない!」と判断して甲状腺ホルモンを作るようにTSHをたくさん出しますが、肝心の甲状腺がうまく働けないためFT4が増えない、という状態です。

必要に応じて行う画像検査(甲状腺エコー検査)

血液検査の結果や診察で、さらに詳しく調べる必要があると判断された場合、甲状腺の超音波(エコー)検査を行うことがあります。これは、首の表面にゼリーを塗り、超音波を発する器具を当てるだけの、痛みや被ばくの心配がない安全な検査です。
この検査によって、甲状腺の大きさや形、炎症の様子、しこり(結節)の有無などを確認することができます。

橋本病の方の10人に1〜2人は、甲状腺機能低下症になる恐れがあります。また慢性の炎症は癌発生のリスクとして知られています。橋本病と診断がついた場合は、特に体調の変化がない場合も、年に一回程度の血液検査とエコー検査をお勧めします。

甲状腺機能低下症の治療法について|薬で元の元気な生活に戻れる?

もし甲状腺機能低下症と診断されたら、どのような治療を行うのでしょうか。
「ずっと薬を飲まないといけないの?」「元の生活に戻れる?」といった治療に関する疑問や不安にお答えします。

基本は甲状腺ホルモン薬(チラーヂンS)の内服治療

甲状腺機能低下症の治療の基本は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補う「ホルモン補充療法」。一般的に使われるのは「チラーヂンS®(一般名:レボチロキシンナトリウム)」という薬で、これは体にもともとある甲状腺ホルモン(T4)を合成したものです。
体に足りない分を補うだけなので、適切に量を調整すれば副作用の心配も少なく、安全に長期間続けることができます。

治療期間は?薬はいつまで飲む必要がある?

原因が橋本病のように、甲状腺自体の機能が回復しにくいものである場合、多くは生涯にわたって薬の内服を続ける必要があります。「一生薬を飲み続ける」と聞くと不安に思うかもしれませんが、心配はいりません。

毎日決まった時間に薬を飲むだけで、血液中のホルモン濃度は安定します。適切にコントロールされていれば、健康な人と何ら変わりなく、活動的な日常生活を送ることができます。定期的に血液検査を受け、主治医と相談しながら最適な薬の量を見つけていくことが大切です。

治療で体調はいつ頃よくなる?副作用は?

薬を飲み始めると、通常は数週間から2〜3ヶ月ほどで、だるさやむくみといった症状が少しずつ改善していくのを実感できるでしょう。ただし、効果の現れ方には個人差があります。

副作用については、処方された量を守っていればほとんど心配ありません。まれに、薬の量が多すぎると、動悸や多汗、体重減少といった甲状腺機能亢進症のような症状が出ることがありますので、私は少量から開始して様子を見ながら維持まで増量して行きます。もし気になる症状が現れた場合は、自己判断で薬をやめたりせず、必ず主治医に相談してください。

治療と並行したいセルフケア|食事と生活で気をつけること

薬による治療が基本ですが、「自分でも何か改善のためにできることはないか」と考える方も多いでしょう。ここでは、治療効果を高め、より快適な毎日を送るためのセルフケアについてご紹介します。

食事の基本|ヨウ素(昆布など)の「摂りすぎ」に注意

甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素は、不足しても摂りすぎても甲状腺の機能に影響を与えます。特に橋本病の方がヨウ素を過剰に摂取すると、甲状腺機能がさらに低下することがあるため注意が必要です。
ただし、神経質にヨウ素を避ける必要はありません。「過剰摂取」を避けることがポイントです。

ヨウ素を特に多く含む食品 摂取のポイント
昆布(だし昆布、とろろ昆布、昆布茶など) 毎日大量に摂取するのは避ける。昆布だしは週に数回程度に。
ひじき、わかめ、のりなどの海藻類 小鉢で食べる程度なら問題ないことが多い。
ヨウ素含有のうがい薬 習慣的な長期間の使用は避ける。
ヨード卵 毎日複数個食べるのは控える。

通常の和食に含まれる程度のヨウ素であれば、過度に心配する必要はありません。バランスの良い食事を心がけましょう。

薬の吸収を妨げる食品・サプリメントに注意

チラーヂンS®は、飲み合わせによって吸収が妨げられることがあります。薬の効果をしっかり得るために、以下の食品やサプリメントは、薬を飲む時間とずらすようにしましょう。

薬の吸収を妨げる可能性のあるもの 対策(服用タイミングの目安)
コーヒー、牛乳、豆乳、大豆製品 薬の服用後、少なくとも1時間はあける
鉄剤、カルシウム剤(サプリメント含む) 薬の服用と4時間以上あけるのが望ましい
食物繊維が豊富な健康食品 薬の服用と時間をあける

一般的に、チラーヂンS®は朝起きてすぐ、空腹時にコップ1杯の水で飲むことが推奨されています。ライフスタイルに合わせて、毎日続けやすい服用時間を見つけることが大切です。

放置は危険?甲状腺機能低下症が引き起こす合併症

甲状腺機能低下症は、症状の進行がゆっくりなため、つい放置してしまいがちです。しかし、適切な治療を受けずにいると、全身にさまざまな影響が及び、深刻な合併症を引き起こす恐れがあります。

脂質異常症(高コレステロール血症)と動脈硬化

甲状腺ホルモンには、血液中の悪玉(LDL)コレステロールを分解する働きがあります。そのため、ホルモンが不足すると血液中にコレステロールが溜まり、「脂質異常症」になりやすくなります。これを放置すると、血管の壁にコレステロールがたまって「動脈硬化」が進行し、将来的には心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高めてしまいます

不妊や妊娠への影響

甲状腺ホルモンは、排卵や月経など女性ホルモンの働きにも影響を与えます。そのため、機能低下症を治療しないままだと、月経不順や無排卵を引き起こし、不妊の原因となることがあります。また、妊娠中に甲状腺機能が低下していると、流産や早産、妊娠高血圧症候群のリスクが高まることが知られています。妊娠を希望する方や妊娠中の方は、特に適切なホルモン管理が重要です。

なお慢性甲状腺炎では特に産後に症状が不安定になることがあるので、注意が必要です。

重症化すると「粘液水腫性昏睡」に至ることも

非常にまれですが、甲状腺機能低下症が極度に重症化し、そこに感染症や寒冷、手術などの強いストレスが加わると、「粘液水腫性昏睡(ねんえきすいしゅせいこんすい)」という危険な状態に陥ることがあります。これは、意識障害や著しい低体温、呼吸不全などを引き起こし、集中治療室での緊急治療が必要となる、命に関わる状態です。

以上のようなトラブルは急激に起きることはありませんが、徐々に進行するため気づきにくく、症状が出たときには難治な場合もあります。まれではありますが、私の個人的経験では、心不全を発症して呼吸困難で救急搬送された高齢女性、うつ病と診断されていた産後の女性などもいらっしゃいました。このような事態を避けるためにも、早期の診断と治療の継続が何よりも大切と考えます。

体質改善を目指す選択肢「漢方治療」とは

甲状腺ホルモン剤の「チラージンS」を毎日飲んで、血液検査の数値は安定している。それなのに、体からだるさが抜けず、手足はいつも冷たいまま…。そんなお悩みを抱えていませんか。

西洋医学の治療で数値が改善しても、つらい自覚症状が残ることは少なくありません。西洋医学とは異なるアプローチで、あなたの不調の根本に働きかける「漢方治療」について詳しく解説します。体質そのものを見直して、心身ともに軽やかな毎日を取り戻すための一歩を踏み出しましょう。

なぜ薬を飲んでもスッキリしない?西洋医学と東洋医学の考え方の違い

甲状腺機能低下症に対する西洋医学の治療は、不足している甲状腺ホルモンを薬で補充することが基本です。これにより、血液検査の数値を正常範囲にコントロールすることを目指します。

しかしホルモンが足りていても、それがきちんと働く身体のコンディションが整っていなければ、冷えや浮腫み・だるさといった症状はとれないこともあります。漢方医学(東洋医学)では、症状の背景にある体全体のバランスの乱れに着目し、それを改善するよう方剤をマッチングさせようと考えます。

陰陽虚実(いんようきょじつ)という身体の状態や、私たちの体を構成する基本的な要素として「()」「(けつ)」「(すい)」のバランスを見極めます。

中国の古典である黄帝内経には「寒なる者は之を熱す。熱なる者は之を寒す。衰える者は之を補す。強き者は之を瀉す」という記述があります。
冷えている状態とは機能が低下しているということで、その場合は機能を賦活します。熱の盛んな状態とは機能が亢進しているときで、この場合はこれを鎮静・抑制するのです。そして気血水が量的に不足したり、流れが滞ることで、さまざまな不調の原因になるので、それを補ったり巡らせるようにします。つまり漢方では一人ひとりの自覚症状の裏にある、検査の数値には表れない「体質」を見極め、それを改善することを目指すのです。

比較項目 西洋医学 漢方医学(東洋医学)
診断方法 血液検査(TSH、FT4など) 四診(望診・聞診・問診・切診)で「証」を判断する
治療の目標 ホルモン値の正常化 陰陽虚実や気・血・水のバランスを整え、自覚症状を改善する
アプローチ 全ての患者に標準的な治療 個々の体質や症状に合わせたオーダーメイドの治療

漢方医学の視点|あなたの不調はどのタイプ?体質(証)から原因を探る

漢方治療では、患者さん一人ひとりの体質やその時々の状態を「(しょう)」という独自の基準で判断します。「証」は、いわば不調の原因を示す「ものさし」のようなものです。そのため、同じ甲状腺機能低下症という診断名でも、AさんとBさんでは「証」が異なり、処方される漢方薬も変わってきます。

これから、甲状腺機能低下症の方によく見られる代表的な「証」のタイプをご紹介します。ご自身の症状と照らし合わせながら、どのタイプに近いかチェックしてみましょう。

セルフチェック:甲状腺機能低下症でみられる代表的な体質(証)

あなたのつらい症状がどのタイプから来ているのか、簡単なセルフチェックで確認してみましょう。複数のタイプにまたがることもあります。

体質(証)タイプ 主な特徴とセルフチェック項目
気虚(ききょ) エネルギー不足タイプ
生命活動のエネルギーである「気」が不足している状態です。
- とにかく疲れやすく、休んでも回復しない
- 声に力がなく、話すのが億劫に感じる
- 食欲がなく、胃もたれしやすい
- 日中でも眠気を感じることが多い
- 風邪をひきやすい
気鬱(きうつ) よく鬱タイプ
生命エネルギーである「気」が巡らない状態です。
- 憂鬱、おっくう
- 頭が重い(頭帽感)
- のどの痞える感じがする
- ガスやゲップが多い
瘀血(おけつ) 血行不良タイプ
全身の血流が滞り、栄養が隅々まで行き渡らない状態です。
- 肩こりや頭痛が慢性的にある
- 生理痛が重く、経血に塊が混じることがある
- 肌がくすみやすく、シミやあざができやすい
- 手足が冷えるが、顔はのぼせることがある
水滞(すいたい) 水分代謝の滞りタイプ
体内の余分な水分や汚れが溜まっている状態です。
- 体が重だるく、むくみがひどい
- めまいや立ちくらみがする
- 吐き気や食欲不振がある
- 雨の日や湿気が多い日に体調が悪化する

体質・症状別にみる代表的な漢方薬と期待できる効果

セルフチェックでご自身のタイプがイメージできたでしょうか。ここでは、それぞれの体質(証)タイプに対して、よく用いられる代表的な漢方薬をご紹介します。ただし、これらはあくまで一例であり、実際の処方は専門家による診断が必要です。

※例えば気虚にも陰陽の区別があり、冷え性タイプ(陰証)ではの補中益気湯よりも人参湯や八味地黄丸などの方が良いこともあります。

体質(証)タイプ 代表的な漢方薬 期待できる効果
気虚(ききょ) 補中益気湯(ほちゅうえっきとう) [陽証] 不足した「気」を補い、胃腸の働きを整えることで、全身の倦怠感や食欲不振を改善します。「元気を取り戻す漢方薬」として知られています。
気鬱(きうつ) 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) [陽証] 「気」の巡りを整えるとともに、水分代謝を改善します。のどの痞え感、不安感、不眠などの症状に効果が期待できます。
瘀血(おけつ) 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん) [陰証] 血行を促進し、ホルモンバランスを整える働きがあります。血行不良による冷え、肩こり、頭痛、生理不順などの改善をサポートします。
水滞(すいたい) 真武湯(しんぶとう) [陰証] 新陳代謝を高めて体の冷えを去り、体内の余分な水分の排出を助け、水の巡りを整えます。むくみやめまい、倦怠感などの症状緩和に用いられます。

漢方治療の気になる疑問Q&A【併用・副作用・費用】

体質改善に漢方薬が良さそうだと思っても、実際に始めるとなると色々な疑問や不安が浮かんでくることでしょう。ここでは、甲状腺機能低下症の方が漢方治療を検討する際によくある質問について、Q&A形式でお答えします。安心して治療を選択するための参考にしてください。

Q1. チラージンSと漢方薬は一緒に飲んでも大丈夫?

はい、基本的には併用が可能です。多くの場合、西洋薬と漢方薬を併用することで、それぞれの長所を活かした治療ができます。西洋薬であるチラージンSが不足した甲状腺ホルモンを直接補充する一方で、漢方薬は体質そのものに働きかけ、ホルモン剤だけでは改善しきれない倦怠感や冷えなどの自覚症状を和らげる効果が期待できます。
ただし、飲み合わせには注意が必要な場合もあります。自己判断で漢方薬を始めるのは絶対に避けてください。必ず、現在の治療状況を理解している医師や、漢方に詳しい薬剤師に相談し、指導のもとで服用するようにしましょう。

Q2. 漢方薬に副作用はないの?

漢方薬は自然由来の生薬から作られているため、体に優しいイメージがありますが、副作用が全くないわけではありません。体質に合わない漢方薬を服用すると、胃もたれや下痢、便秘、発疹などの症状が出ることがあります。また、複数の漢方薬に含まれる「甘草(かんぞう)」という生薬を長期にわたって大量に摂取すると、むくみや高血圧などを引き起こす「偽アルドステロン症」という副作用のリスクがあります。
大切なのは、専門家による正確な「証」の見立てに基づいた、自分に合った漢方薬を処方してもらうことです。服用を始めてから何か気になる症状が出た場合は、すぐに処方してくれた医師や薬剤師に相談しましょう。

漢方と相乗効果!今日からできるセルフケア(食事・運動)

漢方薬の効果を最大限に引き出し、体質改善をスムーズに進めるためには、日々の生活習慣を見直すことも非常に重要です。薬だけに頼るのではなく、食事や運動などを工夫することで、治療との相乗効果が期待できます。

食事で気をつけること

  • 体を温める食材を積極的に摂る: 生姜、ネギ、ニラ、かぼちゃ、鶏肉などは体を温める働きがあります。
  • ヨウ素を適度に摂る: 甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素は、昆布やわかめなどの海藻類に豊富です。ただし、過剰摂取は逆効果になることもあるため、毎日大量に食べるのは避けましょう。
  • 冷たい飲食物は避ける: 冷たい飲み物や生野菜、アイスクリームなどは体を冷やし、胃腸の働きを弱めてしまうため、控えめにしましょう。
おすすめのセルフケア 具体的な内容
食事療法 - 温かいスープや味噌汁を食事に取り入れる
- 香辛料(シナモン、胡椒など)を上手に活用する
- バランスの良い食事を心がけ、鉄分や亜鉛も意識して摂る
適度な運動 - ウォーキングや軽いジョギングで血行を促進する
- 就寝前にゆっくりストレッチをして体をほぐす
- ヨガや太極拳で心身のバランスを整える
ストレス管理 - ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスする
- 趣味の時間を大切にする
- 十分な睡眠時間を確保する

相談できる漢方専門医の見つけ方【西洋医学との連携が重要】

インターネットの情報や自己判断で漢方薬を選ぶのは、効果がないばかりか、かえって体調を崩す原因にもなりかねません。

漢方治療を始めるにあたり、最も重要なのが信頼できる専門家を見つけることです。理想的なのは、西洋医学の知識と漢方医学の知識の両方を持ち合わせ、現在の甲状腺の治療状況をきちんと理解した上で、最適な漢方薬を提案してくれる医師です。日本東洋医学会が認定する「漢方専門医」は、一つの目安になるでしょう(日本東洋医学会の「漢方専門医・指導医」の検索システムを利用して、検索条件を設定しお近くの専門医を見つけることができます)。

8. まとめ|原因不明の不調を感じたら、ひとりで悩まず専門医に相談を

この記事では、甲状腺機能低下症の症状から原因、診断、治療法までを詳しく解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度確認しましょう。

  • 甲状腺機能低下症は、だるさ、冷え、体重増加など、多彩な症状を引き起こす病気で、特に30代〜50代の女性に多いです。
  • 原因の多くは橋本病という自己免疫疾患です。
  • 診断は主に血液検査で行われ、治療は不足したホルモンを薬で補う安全な方法が第一選択です。
  • 適切な治療を続ければ、症状は改善し、健康な人と変わらない生活を送ることができます。
  • もし甲状腺ホルモンの値が正常な状態でも改善がない症状があれば、漢方治療も選択肢になります。

あなたが、これまで「気のせい」「年のせい」と片付けていた原因不明の不調に悩んでいるのなら、それは体からの大切なサインかもしれません。ひとりで悩まず、ぜひ一度、内分泌内科や内科で相談してみましょう。
それでも症状が改善しない時には、漢方治療もお役に立てるかもしれません。

当院では、西洋医学的な血液検査などのデータと、東洋医学的な舌診・脈診などを組み合わせ、総合的に患者さんの状態を判断して治療方針を立てています。内科専門医が総合診療の中で甲状腺疾患の診療を行い、必要に応じて血液検査・超音波検査を行い、西洋医学的診断と治療を行っています。
また精密検査や手術など高度な治療が検討されるべき時には、高次医療機関への紹介をさせて頂いています。

その上で、体質そのものから改善を目指す「漢方治療」も行っており、「冷え」「だるさ」「むくみ」といった個々の症状の背景にある、患者さん一人ひとりの体質(「証」)に合わせて漢方薬を処方しています。
(すでに内科的治療漢方診療を行っている方には、漢方治療のみの対応も行なっていますので、現在おかかりの主治医の先生とご相談の上ご来院ください。)

文責:横山浩一
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